「背教者ユリアヌス」



 辻邦生「背教者ユリアヌス」

 作者おとくいのヨーロッパの歴史物なので期待したのだけれど、それほどでもなかった。人物の性格設定が紋切り型だし、哲学青年のユリアヌスが有能な戦略家になる転換が唐突で不自然だ。

 ただ、ローマ帝国の古代宗教とキリスト教の関係が詳しく記されていて興味深かった。当然のことながら、ヨーロッパにおいてもキリスト教がすんありと受け入れられていたわけではないことが判る。1,500ページの長編を地下鉄とバスによる通勤時間を利用して1か月で読めたのもよかった。

Photo: Canon PowerShot S120
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「死をもちて赦されん」

死をもちて赦されん

 ピーター・トレメイン「死をもちて赦されん」読了

 探偵役の聡明な修道女と面倒見のいいワトソン役の修道士というガチンコのコンビ。安心して読める。トリックは平凡で意外性もないものの、文章に(訳文も)格調があるので一級品のミステリィといえる。

 中世のキリスト教史は複雑すぎて辟易する面もあるが、そうだったのかと教えられる点も多い。この作品に続くシリーズは読んでみようと思う。

Photo: iPhone 5s Camera

「大菩薩峠」

大菩薩峠

 ついに読了した中里介山「大菩薩峠」全20巻。昨年の9月から読み始めたから6か月を要したことになる。

 人物造形の巧みさ、文章のうまさ、特にその人物がいかにも言いそうな台詞回しの的確さは他の作家の追随を許さない。とにかくおもしろかった。

 最後の2巻はかなり破綻してたが、あまりに登場人物を作りすぎたので伏線を回収しきれなかったのだろう。次に読む本は決まってはいるけど、大菩薩ロスになるかも。

「大菩薩峠」第2巻

大菩薩峠

 中里介山「大菩薩峠」第2巻読了。

 登場人物が次々と死んだり突然不具になったり展開がめまぐるしい。この小説は成功作なのか、長大な失敗作なのかわからなくなってきた。今の印象はどちらかといえば後者だ。

Photo: iPhone 5s Camera

「渡良瀬」



 佐伯一麦「渡良瀬」読了

 1ページ目を読んだとこから傑作の予感がし、その印象は最後のページまで変わらなかった。徹底した私小説であるからして、作為的な劇的展開はない。しかし、日々の生活のディテールがしっかり書き込まれており、とにかく文章がうまいので、読ませられる。

 佐伯一麦は私小説に徹底した作風なので、村上春樹などのようなメタファーの構築こだわる小説家とは対象的な位置にあるが、今や日本を代表する小説家だと思う。

 この作者については、小説のために人生を演じている感じにはならないかなとつい考えてしまうのだけれど、そうなったとしても小説のために人生を演じている自分について書くことができるので、題材は尽きないのであった。
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自分らしく生きることに
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