「人生の親戚」



 大江健三郎「人生の親戚」読了

 これも再読で、「楡家の人びと」と異なりけっこう細部まで覚えていた。女性主人公のパンティが出てくる場面が強烈な記憶に残っていたら、やはりあった。

 ヒロインの倉木まり恵は実在の人物をモデルにしたものではなくまったくのフィクションだと思うが、そうとは思えないほどのリアリティを有している。この作者の筆力のすごさにはまいる。
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「楡家の人びと」



 北杜夫「楡家の人びと」読了

 個人ではなく、家族あるいは家系を描ける作家はもういないのではないだろうか。圧倒された。「細雪」に並ぶ傑作だ。戦争場面の描写は白眉。

 "天下国家を論じる無職"というのはいつの時代にもいるもんだ。今はそんなのばっかりだけど。個人的には今年度のベスト・ワンにしたいところだが、再読なのでどうするか。

「魔都」



 久生十蘭「魔都」読了

 これはおもしろかった。通勤時のバスや地下鉄で読むのが待ち遠しかった。これほど夢中になって読んだ小説も久しぶりだ。

 戦前の首都東京の映像が浮かんでくるような文章がすばらしい。謎解きはたいしたことはないとか、回収されていない伏線があるとかいうのはそのとおりとしても、さしたる欠点ではない。映画化すれば「帝都物語」のような傑作になったか。実相寺昭雄で撮ってほしかった。

「木立ちの中の日々」



 マルグリット・デュラス「木立ちの中の日々」読了。

 フランスの植民地で暮らす思春期の少女を描いた「ボア」が、後の「愛人」や「北の愛人」の世界を予告しているようでよかった。デュラスの熟年期の無駄な言葉を一切排除した、詩のような文章もいいけど、初期の饒舌な作品も好きである。

Photo: iPhone8

「シェルタリング・スカイ」



 ポール・ボウルズ「シェルタリング・スカイ」読了

 そんじょそこらの小説とは格が違う、という感じ。


 「ここの空は奇妙だ。空は硬くて、背後にあるものから僕らを守っているような気がする」
 「背後にあるものから?」
 「そうだ」
 「背後に何があるの?」「何もない。ただの闇だ。絶対的な闇だ」


 この一節に尽きる。後はいらないほど。

Photo: iPnone8
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還暦をすぎ第二の職場に通う日々。自分では気を使っているつもりでも、妻からは自由人と言われている。

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