「渡良瀬」



 佐伯一麦「渡良瀬」読了

 1ページ目を読んだとこから傑作の予感がし、その印象は最後のページまで変わらなかった。徹底した私小説であるからして、作為的な劇的展開はない。しかし、日々の生活のディテールがしっかり書き込まれており、とにかく文章がうまいので、読ませられる。

 佐伯一麦は私小説に徹底した作風なので、村上春樹などのようなメタファーの構築こだわる小説家とは対象的な位置にあるが、今や日本を代表する小説家だと思う。

 この作者については、小説のために人生を演じている感じにはならないかなとつい考えてしまうのだけれど、そうなったとしても小説のために人生を演じている自分について書くことができるので、題材は尽きないのであった。
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「みみずくは黄昏に飛びたつ」

 村上春樹と川上未映子の対談「みみずくは黄昏に飛びたつ」を読んでいる。僕は村上春樹の小説は大好きだが、小説以外の作品はそれほどではない。エッセイや対談などは小説と比べるとかなり手を抜いているという印象を持っていた。

 しかし、この本はいい。対談というより、村上春樹の「騎士団長殺し」をめぐる川上未映子のインタビューなのだけど、川上の質問が的確で村上のこれまでにない(たぶん)本音ベースの答えを引き出している。さらに、村上作品の解説にとどまらず小説全般に当てはまる芸術論になっている。川上未映子って頭いいんだな。

 それにしても、このインタビューを読んでいると創作をするにはインスピレーションが外から舞い降りてくる天賦の資質が必要だということが改めて判るなあ。

「吹雪の山荘」



 笠井潔「吹雪の山荘」読了

 笠井潔を初めとした6人の著名なミステリー作家によるリレー小説。リレー小説はこれまでにも何冊か読んだけど、それぞれの作者の持ち味が薄まっておもしろかったためしがない。野球オールスターゲームと同じようなもの。

 それでも、笠井潔の作品がいちばん読み応えがあって、矢吹駆シリーズファンの僕としては楽しめた。6人の中で最初の作者だから得だと言えるが。日本でフランス語を教えている30代のナディア・モガールがW大学准教授になった西之園萌絵みたいでおかしい。

「その可能性はすでに考えた」



 井上真偽「その可能性はすでに考えた」読了

 ライト・ノヴェルっぽいが、謎解きの論理は秀逸、或いは謎解きの論理は秀逸だがライト・ノヴェルっぽい。

 時として論理展開のために物語を利用しているかのような作為的な感じがする。物語は自ずと展開されるもの。感情移入ができる人物が出てくると次作をもっと読みたくなるのでは。

「ダマシ☓ダマシ」



 森博嗣「ダマシ×ダマシ」読了

 なんだかよく判らなかった。このシリーズには謎ときのトリックはないので、そこのところに疑問はないのだが、一部の登場人物の素性が理解できない。西之園萌絵が少しだけ登場する意味も不明だ。このシリーズはこれで終わりだから宙ぶらりんのままだな。それが狙いなのか読み込みが足りないのか。
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そろそろ休みたくなってもきた、
いっこうに悟りそうもない男の日常。

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